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誰かと暮らすということ

伊藤たかみ作の、東京は下井草を舞台にしたあるカップルたちの短編集。下井草にあるレンタルショップ『グレープ』で働く人や、お客としてくる人たちが直接関わることはないのだけれど、その人たちが誰かと暮らしていく中で、ささやかな幸せを感じるお話です。

この小説のメインである、セージと虫の会社の同期の関係から、恋人に発展し、一緒に暮らすことになるまでの過程で、一緒に食事をしたりするのだけれど、ぶっきらぼうな感じで、深くは関わらない。ちょっと距離を置きつつも、それがちょっと寂しくて、でもそれ以上踏み込めなくて、そんなもどかしい関係から、少しずつ相手のことが頭から離れなくなって、ふとした時に、二人は恋人同士になります。

その後、セージがアパート更新に伴い、自分の部屋を出て、虫のところに数か月居候することになります。

セージがすべての荷物をほどかないことに、いずれは出て行ってしまうのか、本当に自分のことが好きなのか不安になったりする虫の気持ちが共感出来ます。

決して、付き合いたてのラブラブ感はないのですが、セージが二人で暮らす新居を探していて、段ボールを開けずにいたことがわかり、幸せを感じる虫。

この二人の恋人になるまでの心境や、恋人になってからの不安や幸せが、素直に書かれていて共感でき、読んでいてきゅんきゅんしました。

久しぶりに、読んでいて幸せな気持ちになる小説でした。

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