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エッセイ本『かくかくしかじか』

数多の漫画賞を総なめしている東村アキコの『かくかくしかじか』。
自身が通っていた宮崎県にある美術教師の恩師を描いたエッセイ本。
将来漫画家になろうと決めているものの、漫画を読む事以外具体的な事をしていなかった東村アキコの原点ともいわれる物語を全5巻によって綴っています。
高校生時代、美術教室に通い始めたころ、つまりその恩師との出会いから、病気により、恩師との別れまでを描いているのですが、この漫画の特徴はまさに東村アキコ独特の緩急がはっきりくっきり出ているところ。
普通の漫画だと、物語はあくまで想像上のものだからこそどこか現実離れしている感覚になりますが、エッセイ本だと東村アキコ自身に本当に起こった事、そしてそれは誰もが起こりうることだ、と思うと、その緩急がいつもの倍以上の力になって涙を誘ってきます。
また、物語の舞台が現在と過去を行き来しているので、その当時東村アキコが思っていたこと、そして今東村アキコが思っていることを同時に感じることができ、その時の恩師の優しさ、その時の東村アキコの未熟さなどがより理解できるようになっているのもポイントの一つ。
特に、未熟故にとってしまった行動に対し、今現在の東村アキコの思いを読むと、自然と胸が締め付けられるような感覚になります。
誰もが抱いたことのある感情、でもなかなか認めづらかったり、口には出せなかったりする内容を、東村アキコが代弁してくれているという感じで、妙な既視感は読んだ後もずっと残って、きっと忘れられない作品になるとおもいます。
恩師が東村アキコにずっと言っていた「描け。描け。描け。」という言葉が、自分だとどういう言葉に置き換えられるのか、ぜひ考えてみてください。

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