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村上春樹で一番のお気に入り アフターダーク

私は村上春樹シリーズを何冊か読んでいますが、その中でも最も好きなのが「アフターダーク」です。

内容的にはそれほどハッキリしたテーマはなく、ある都会の街の一晩の様子を中心に物語が進んで行くのですが、もともと田舎出身の私からするとこの描写が当時住んでいた大阪の街と重なり、どこかリアリティがあって楽しく読めました。田舎出身の方は、まずこの点でアフターダークは楽しめるかもしれません。

この小説ではある少年が、自分が法律について学び始めたことを登場する女の子に話すシーンがあります。私はここが一番好きなのですが、少年は自分が裁判所に立ち入ることがあったのをきっかけに、裁かれている人と自分との間の距離がわからなくなっていきます。そして今までは、その裁かれている人は自分とは遠い全く関係のない世界にいる人だったものが、その人の内にひめているものは実は自分にもあるのではないか、自分と全く遠い世界にいると感じていたその人と自分はそれほど違いがないのではないかと感じるようになったと言います。少年は「あっちの世界」と「こっちの世界」と表現していますが、その混乱が彼に法律を学ぶことへ駆り立てたと言います。「学ばずにはいられないんだ。」と言います。このドロドロとした少年の気づきがもうたまりません。

僕自身も、犯罪を犯したこともなければ寝る場所もあり働くところもありますが、浮浪者なんかを見ていて「自分だってこうなってたかもよ。」と感じることは多々あるのです。そして彼らと自分との違いなんてさほど無いように感じることがあるので、この少年の気づきはもう小説にも関わらずラインマーカーを何本も引くくらい好きで読みまくりました。

一般大衆受けする小説ではないかもです。ただ、どこか人の気持ちの大きな動きに触れたい方、この小説はオススメです。

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